海外FXの税金はどうなるのか理解しておくと、確定申告や納税に悩むことなく海外FXの取引ができます。
そこでこの記事では、海外FXの税金に関する疑問を解消するため、以下のようなポイントを詳しく解説します。
海外FXの税金について詳しく知りたい人は、ぜひ最後までご覧ください。
海外FXにおける税金の基本情報
海外FXの税金について、基本情報を紹介します。
海外FXの税金が発生するタイミングは?
海外FXで得た利益に税金が発生するタイミングは、利益(所得)がある年の12月31日が終了した時です。
所得税や住民税は1年間の所得で計算されるので、1年が終わり所得が計算できるようになってから納税義務が成立します。
なお、含み益(評価益)があったとしても、まだ利益は実現していないので税法上の利益(所得)とはなりません。
海外FXで課税対象となる利益は?
海外FXの取引で得られる以下の利益は、所得税や住民税の課税対象です。
- 決済差益
- スワップポイント
決済差益とは、1ドル155円の時に買ポジションを保有し、1ドル160円の時に決済したときなどに生じる利益をいいます。
スワップポイントとは、本来の決済期日を繰り延べる(ロールオーバーする)処理によって生じる損益であり、ポジションを持ちながら一定の時間をまたぐと、スワップポイントが発生します。
海外FXではいくらから確定申告が必要?
確定申告の必要性は、海外FXで得た利益がいくらかだけでなく、おおよそ納税額があるかどうかで判断します。
次の計算において残額がある
(計算)
1 各種の所得の合計額(譲渡所得や山林所得を含む。)から、所得控除を差し引いて、課税される所得金額を求めます。
引用元:国税庁
2 課税される所得金額に所得税の税率を乗じて、所得税額を求めます。
3 所得税額から、配当控除額を差し引きます。
他の所得や所得控除の金額によって変わるので、海外FXで得た利益がいくら以上なら確定申告が必要と一概に判断できません。
判断が難しい場合は、事前に税務署もしくは税理士に相談しておきましょう。
海外FXで確定申告が必要になる人
海外FXで得た利益の金額だけで確定申告の必要性は判断できませんが、以下2つのケースで目安となる金額を解説します。
所得税の確定申告について解説しますが、住民税の申告も忘れないように注意しましょう。
会社員やアルバイト|給与所得以外の収入が20万円を超えた場合
会社員やアルバイトなど給与所得がある人は、おおよそ、「副業の給与収入+給与所得や退職所得以外の所得」が20万円を超えると確定申告が必要です。
言い換えると、本業の勤務先と海外FX以外の収入がない一定の給与所得者は、海外FXで得た所得が20万円以下なら確定申告をする必要はありません。
ただし、年間給与収入が2,000万円を超えている人などは、20万円以下でも確定申告が必要です。
勤務先での年末調整ができないことが理由として挙げられます。
個人事業主や専業主婦|年間所得が48万円を超えた場合
個人事業主や専業主婦(主夫)など給与所得者ではない人は、海外FXで得た所得を含めて年間所得が48万円を超えると、確定申告が必要です。
ここでいう所得とは、収入から経費を差し引いた利益に相当する金額を指します。
所得税の基礎控除は合計所得金額が2,400万円以下なら48万円あるため、所得が48万円以下であれば課税される所得金額は残りません。
専業主婦で他に所得がなければ、海外FXの所得が48万円以下であれば確定申告は不要です。
一方、個人事業主で事業所得が40万円ある場合、海外FXの所得が8万円を超えると確定申告をする必要があります。
住民税は別途申告が必要
住民税は、海外FXで得た所得が1円でもある場合は、原則として申告が必要なので注意してください。
住民税は、所得税のように一定の給与所得者で給与や所得が20万円以下であれば確定申告が不要となる制度がないからです。
市区町村によって具体的な取扱いは異なるので、市区町村に問い合わせて確認するとよいでしょう。
なお、所得税の確定申告をすると住民税の申告もしたとみなされるので、別途住民税の申告をする必要はありません。
海外FXと国内FXの税金の違い
海外FXと国内FXの税金について、違いをまとめると以下のとおりです。
海外FX | 国内FX | |
---|---|---|
課税区分 | 総合課税 | 申告分離課税 |
税額の計算方法 | 他の所得と合算する | 合算せず個別に計算する |
所得税の税率 | 超過累進税率 (5~45%) | 一定税率 15% |
住民税(所得割)の税率 | 10% | 5% |
損益通算 | 総合課税の雑所得同士ではできる その他の所得との損益通算はできない | 先物取引に係る雑所得等同士ではできる その他の所得との損益通算はできない |
損失の繰越控除 | できない | できる(翌年以後3年間) |
海外FXと国内FXの課税区分の違い
国内FXで得た利益は、租税特別措置法第41条の14により、先物取引に係る雑所得等として申告分離課税が適用されます。
一方、第一種金融商品取引業を行う金融商品取引業者等ではない海外FXは、租税特別措置法第41条の14の適用対象とはなりません。
したがって、海外FXで得た利益は申告分離課税ではなく、総合課税の対象になります。
②店頭デリバティブ取引のうち、金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る。)又は登録金融機関以外との取引は、総合課税の対象となる。
引用元:国税庁
総合課税では、以下のとおり、雑所得のほかにも給与所得や事業所得といった各種所得金額を合計して税額を計算します。
- 所得金額を計算する(雑所得は総収入金額-必要経費)
- 総所得金額を計算する
- 課税所得金額を計算する(総所得金額-所得控除の合計額)
- 所得税額を計算する(課税所得金額×超過累進税率)
申告分離課税では、他の所得金額と合計せず個別に税額を計算します。
海外FXと国内FXの税率の違い
海外FXで得た所得に適用される税率は、所得税は5~45%の超過累進税率、住民税は10%の一定税率です。
つまり、所得税は所得が大きくなればなるほど税率が高くなりますが、住民税は所得がいくらだったとしても変わりません。
一方、国内FXで得た所得に適用される税率は、所得税は15%の一定税率、住民税も5%の一定税率です。
海外FX | 国内FX | |
---|---|---|
所得税の税率 | 超過累進税率 (5~45%) | 一定税率 15% |
住民税(所得割)の税率 | 10% | 5% |
復興特別所得税の税率 | 所得税額の2.1% | 所得税額の2.1% ※課税所得に対して0.315% |
合計した税率 | 課税所得に対して15%~ | 国内FXの所得に対して20% |
なお、令和19年(2037年)分までは、所得税額の2.1%の復興特別所得税も納税しなくてはいけません。
海外FXの所得を含めて計算した課税所得金額が432万円未満であれば、国内FXよりも海外FXのほうが税金を抑えられる可能性があります。
ただし、実際に税金を抑えられるかは個々の事例によって異なるので、判断が難しい場合は税理士に相談してみると良いでしょう。
海外FXと国内FXの損益通算の可否の違い
海外FXと国内FXどちらとも、同じ所得内では通算できても、他の所得とは通算できません。
海外FXで得た所得は通常「総合課税の雑所得」に区分されるため、同じく総合課税の雑所得に区分される以下のような利益や損失と通算できます。
- 暗号資産取引
- 原稿料
- 印税収入
- 講演料
- 個人年金保険の保険金
ただし、給与所得や事業所得など、雑所得に区分されない他の損益とは通算できません。
なお、国内FXで損失が出ると、その年の翌年を1年目として数えて3年目までは、将来利益が出たときに相殺(通算)できます。(先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除)
しかし、第一種金融商品取引業を行う金融商品取引業者等ではない海外FXは、繰越控除の適用を受けられません。
つまり、翌年以降に損失を繰り越すことはできないので、注意しましょう。
海外FXにかかる税金の計算方法
海外FXで得た所得にかかる税金(所得税)の計算方法を紹介します。
海外FXで得た所得は通常「総合課税の雑所得」に区分されるので、税額計算の流れはおおむね以下のとおりです。
所得金額を計算する
雑所得の計算における総収入金額とは、1年間の利益のことで、決済差益やスワップポイントなどが含まれます。
また、必要経費とは、その利益を得るために直接必要な費用や取引のために生じた費用です。
明確な基準はありませんが、少なくとも海外FXの取引手数料は必要経費として認められます。
仮に海外FXで1年間に得た決済差益とスワップポイントの合計額が100万円、支払った手数料が10万円なら、雑所得は90万円(総収入金額100万円-必要経費10万円)です。
総所得金額を計算する
続いて総所得金額を計算します。
仮に給与所得が316万円(給与年収450万円に相当)で、先ほど計算した雑所得90万円のほかに所得がなければ、総所得金額は406万円です。
課税所得金額を計算する
続いて課税所得金額を計算しますが、まず所得控除の合計額がいくらかを把握しなければなりません。
所得控除には基礎控除や社会保険料控除、配偶者(特別)控除などがあり、今回は150万円とします。
すると、課税所得金額は総所得金額406万円から所得控除の合計額150万円を控除した256万円です。
なお、計算結果に1,000円未満の端数がある場合は切り捨てます。
所得税額を計算する
最後に所得税の速算表を使って所得税額を求めると、速算式は「課税所得金額2,560,000円×税率10%-控除額97,500円」となり、結果は158,500円です。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,769,000円 |
復興特別所得税(所得税の2.1%)は3,328円となり、所得税と復興特別所得税をあわせると161,828円です。
海外FXの確定申告方法・手順
海外FXで得た所得について、確定申告の方法や手順を紹介します。
海外FXの確定申告に必要な書類
確定申告に必要な書類は、以下のとおりです。
- 申告書第一表・第ニ表
- 添付書類台紙(番号確認書類、身元確認書類など)
通常の確定申告と同じであり、海外FXの所得があるからといって特別に提出を求められる書類はありません。
ただし、収入金額と必要経費を記載する必要があるので、以下のような書類も準備しておきましょう。
- 1年間の決済差益やスワップポイント、支払った取引手数料がわかる取引履歴や報告書
- 必要経費を支払ったことがわかる領収書
また、給与所得がある場合には、源泉徴収票を見ながら必要事項を入力します。
確定申告書に必要な書類の入手方法
確定申告書は、国税庁のホームページや税務署の窓口、確定申告会場で入手できます。
国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用すると、別途入手する必要はないため便利です。
海外FXの取引履歴や報告書は、海外FX業者か、MT4やMT5といった取引プラットフォームを通じて入手できます。
確定申告書類を作成する
必要書類を準備できたら、確定申告書の作成を進めましょう。
確定申告書は、確定申告書等作成コーナーから作成できます。
雑所得の入力画面では、以下のように入力するとよいでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
種目 | その他(証拠金取引など) |
業務に該当しますか? | いいえ |
収入金額(円) | 取引履歴報告書などに記載された1年間の決済差益とスワップポイントの合計額 |
必要経費(円) | 取引履歴報告書などに記載された1年間の取引手数料など |
源泉徴収税額(円) | 入力しない |
未納付の源泉徴収税額 | 入力しない |
所得の生ずる場所又は法人番号 | 海外FX業者の所在地 |
報酬などの支払者の氏名・名称 | 海外FX業者の名称 |
取引報告書や必要経費の金額がわかっていれば、雑所得の入力にそれほど時間はかかりません。
確定申告書類を提出する
確定申告書を作成できたら、以下のいずれかの方法で税務署に提出します。
- 確定申告書等作成コーナーで作成した確定申告書をそのままe-Taxで送信
- 税務署等に郵送
- 税務署の窓口に持参(特設会場が設置されることもある)
- 税務署の時間外収受箱に投函
確定申告書の提出期間は、原則2月16日から3月15日(期限が土日祝の場合はその翌日)となっています。
ただし、期日が近くなると税務署や特設会場の窓口は非常に混みあうので、できれば2月中に手続きを済ませるようにしましょう。
海外FXの税金対策と節税方法
海外FXにおける税金対策と節税方法は、以下のとおりです。
海外FX取引にかかった費用を経費として計上する
海外FXで得た利益は、全額を雑所得の金額として税金を計算するのではなく、必要経費があれば差し引けます。
少なくとも取引手数料は必要経費として認められるので、支払った場合は必ず必要経費として計上しましょう。
取引手数料を含め、以下の費用は必要経費として認められる可能性があります。
- 取引手数料
- 取引のための通信費
- 書籍代
- 取引のためのパソコンの購入費
- FXセミナーの受講費
なお、家賃や光熱費、通信費など家事上の経費(家事関連費)は、主にFX取引に必要であり、かつ、その必要部分を明らかに区分できる場合における必要部分しか認められません。
たとえば、自宅の一部を書斎兼トレーディングルームとして使っていて、その部屋の広さが全体の30%程度だったとします。
この場合、家賃や光熱費、通信費の30%を経費として計上する余地がありますが、問題がないかは税理士もしくは税務署に確認しましょう。
所得控除を活用する
海外FXとは直接関係しませんが、節税するためには、受けられる所得控除を確実に適用することが重要です。
所得控除とは、所得金額の合計額から一定の額を差し引いて課税所得金額を抑えられる仕組みです。
次の15種類が、所得控除として認められています。
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 障害者控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 基礎控除
- 雑損控除
- 医療費控除
- 寄附金控除
各控除の要件を確認し、受けられる控除があれば確実に年末調整で提出する書類や確定申告書に記載しましょう。
他の副業で発生した損失を合算する
海外FXで得た所得は通常「総合課税の雑所得」に区分されるので、他の副業で発生した損失を合算できる場合があります。
仮に海外FXで100万円の利益があっても、暗号資産取引で100万円の損失があれば雑所得は0円です。
ただし、その副業により得られた収入が「雑所得」として扱われない場合は、合算できません。
法人化する
個人と法人では税制が異なることから、法人化して海外FXを取引するほうが税金を抑えられる場合もあります。
一般的に、法人化する税制上のメリットは以下のとおりです。
- 個人と比べて経費(損金)に算入できる範囲が広い
- 10年間の繰越控除を受けられる(青色申告が前提)
- 給与所得控除を活用できる
- 税理士への顧問料が発生する
一方で、法人の設立には費用がかかるほか、役員報酬を受取る場合は社会保険料の負担が生じることに注意しなければなりません。
また、思うように利益が出せないからといって個人事業主に戻ろうとするのは、会社を廃業することになるため余計に費用がかかります。
法人化はメリットだけでなくデメリットもあるので、詳細にシミュレーションをしながら検討するのをおすすめします。
よくある質問|海外FXの税金について
最後に、海外FXの税金に関するよくある質問にお答えします。
まとめ
ここまでの内容を踏まえ、記事の要点をまとめました。
- 海外FXによる決済差益、スワップポイントは総合課税における雑所得となる
- 国内FXのように、給与所得・事業所得と合算し、所得控除を差し引いて税金を計算することはできない
- 期限内での確定申告が必須となる
- 節税したい場合は経費の計上や所得控除の活用、法人化の検討を
ただし、税制は日々変わっているので、最新の情報では扱いが変化することもあり得ます。
その点も含め判断が難しい場合は、税務署または税理士に相談することをおすすめします。